煎茶道とは?
日本の代表的な伝統文化【茶道】には、「抹茶道」と「煎茶道」が存在します。
日本の茶道には粉末茶を使用する抹茶道(茶の湯)と葉茶を急須で淹れる煎茶道とがあります。一般的に、「茶道」と聞くと、抹茶をシャカシャカしているお点前を想像されるかと思いますが、それは厳密に言うと「抹茶」「茶の湯」と呼ばれるものです。
それに対して「煎茶道」とは、文字のごとく煎茶(葉茶)を用いたお点前をする式作法のことです。抹茶を用いる式作法との差別化のため、「煎茶道」と呼ばれています。
煎茶道と抹茶道の違いについて
煎茶道と抹茶道は成り立ちが異なります。
中国宋代に用いられていた抹茶法が日本に伝わり、能阿弥、一休宗純、村田珠光、武野紹鴎らの影響を受け、千利休が安土桃山時代に完成させたものです。そして、抹茶道は主に武家社会に浸透していきました。
それに対して煎茶道は、江戸時代中期以降に文人墨客(当時の文化人)たちの間に流行しました。当時は茶道の形骸化が進んでおり、それに異議を唱えた知識人たちが形にとらわれない茶道として見出したのが煎茶道です。そのため、煎茶道は茶室や道具に必要以上のこだわりを持たず、自由な精神や風流を重んじます。文人墨客たちが自然の中で嗜んだ煎茶道の精神は、堅苦しいものではなくより日常的な茶道として親しまれています。
かの岡倉天心も「茶の本」の中で団茶、抹茶、煎茶、それぞれの製法や時代背景を含め、その流れについて古典派、浪漫派、自然派と示しています。そして日本人にとっての茶の道は生きる技を磨くものだとも紹介しているのです。
日常のお茶
現在、日常のお茶は葉茶で淹れる煎茶です。近年では急須で淹れることを面倒くさいと避けてしまい、ペットボトルやティーパックが増えています。ただ、これらのお茶ではいくら頑張っても美味しいお茶には巡り合えません。…なぜなのか?を探るのも面白いですね。
そもそも煎茶道は、隠元禅師が中国から煎茶とその周辺文化を日本に伝えたことに始まりました。その後、高遊外売茶翁によって知識人や文人墨客を中心に文人煎茶趣味が広がり、現在でも私たちの生活には密接にかかわっているのです。
同じ【茶道】でも、「煎茶道」と「抹茶道」は成り立ちや歴史、精神性は若干異なりますが、一期一会や茶禅一味といった根本的な思想は同じです。
いずれにせよ茶道は生活に根ざした文化であり、日本文化の集大成であると言われています。日本の文化に興味があれば是非体験してみてください。実際に茶道を習ってみると思わぬところで色んな文化や歴史と結びつき、たくさんの教養が身につきますよ。
では、煎茶道にはどのくらい流派があるの?
お客様の前で美しく日本茶を淹れ、心を込めたおもてなしをする煎茶道
緑茶が好きだから興味はあるけど、どう始めればいいかわからない。という方も多いでしょう。
ここでは煎茶道の流派についてお知らせしたいと思います。
煎茶は中国から伝えられたのが江戸時代。
インゲン豆で有名な隠元禅師は中国の高僧で1661年に京都宇治にある黄檗山萬福寺を開山されました。その時に蓮や孟宗竹、西瓜、明朝体文字、ダイニングテーブルなどとともに煎茶とその周辺文化も日本に伝えられました。
その後、黄檗僧であった高遊外売茶翁が江戸の文人墨客たちに煎茶を飲みながら禅の精神を伝えるなどして、煎茶道という精神的なものが確立されていきました。
江戸後期には煎茶の宗匠が出始め、明治、大正、昭和初期には各地で流派が立ち上がりました。
このように隠元禅師に由来することもあり、現在も黄檗宗の総本山である黄檗山萬福寺には一般社団法人全日本煎茶道連盟の本部があるのです。
その一般社団法人全日本煎茶道連盟に加盟している煎茶道の流派だけでも現在30余りの流派があります。それ以外にも各地にお家元本部があり、それぞれが流派独自の活動をしています。
毎年5月には全国大会が開催され、京都宇治の黄檗山萬福寺に各流派が集い、賑々しく2日間の煎茶会が開催されます。
他にも近畿支部に所属する流派合同の秋の月見茶会や東京地区茶会、愛知地区茶会なども盛んに開催されています。黄檗山万福寺以外でも各流派がそれぞれの地域で煎茶会を開催しています。
流派の違い
そしてそれぞれの流派では日本茶の種類や点前、お家元の流派に対する考え方などが異なります。
例えば、煎茶道では主に日本茶の最高級である玉露を使用しますが、もちろん煎茶やほうじ茶なども使用します。しかし、お家元の方針により、日本茶のみならず中国茶や台湾茶、紅茶をされている流派もあります。
また煎茶会では玉露茶碗で二煎いただくことが多いのですが、一煎だけの流派や一煎とお酒というケースもあります。
使用する茶種や道具により点前所作も変わりますが、流派の考え方やお家元の趣向により点前や部屋飾りの拘り方、煎茶道で好まれる花(文人華)やそのほか、学べる内容なども違います。
美しい所作で有名な流派から、所作よりも楽しむことを優先する流派まで様々です。
活動範囲も世界規模から地域限定、活動状況や会員の年代層まで流派の特徴がありますので、事前にホームページでお家元の考え方や流派の特徴などをご参考にされるとよいでしょう。
現代では急須でお茶を淹れることを知らない人たちも増えています。
いざというときに、日本茶を美味しく淹れて美しくおもてなしできる。大人のたしなみとして身に付けておきたいですね。
一般社団法人全日本煎茶道連盟 加盟流派紹介
流 名 | 家元名 | 流 名 | 家元名 | 流 名 | 家元名 |
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知足庵流 | 嶺崎千泉 | 黄檗松風流 | 加藤久道 | 愛茗流 | 木村幽亭 |
日本礼道小笠原流 | 諸泉祐園 | 薫風流 | 加藤景友 | 黄檗幽茗流 | 三浦佑晃 |
松莚流 | 中村松継 | 松風流(名古屋) | 仙田梅豊 | 黄檗掬泉流 | 弓削裕圃 |
光輝流 | 佐々木竹山 | 玉泉流 | 加藤玉峯 | 松風花月流 | 高野楓石 |
小笠原流 | 小笠原秀道 | 売茶流 | 高取友仙窟 | 羽楽流 | 久保宗劉 |
二條流 | 二條雅荘 | 松月流 | 渡辺宗敬 | 三彩流 | 星 千丈 |
方円流 | 水口豊園 | 静風流 | 海野俊堂 | 織田流 | 奥村南裕 |
黄檗売茶流 | 中澤孝典 | 黄檗弘風流 | 高鳥真堂 | 狭山流 | 長谷山芳喜 |
文房流 | 徳山圭峰 | 東阿部流 | 土居雪松 | 美風流 | 中谷美風 |
松風流(富山) | 宝島三宝 | 松香庵流 | 嶋田静坡 | 三癸亭賣茶流 | 島村仙友 |
蕉風流 | 小林蕉洞 |