対話は一碗から始まる──日中友好と煎茶道の役割
近ごろ、国と国との関係が揺らぎ、不安な空気が流れることがあります。
しかし、人と人の心には、政治の変化に左右されない普遍のつながりがあると、私は煎茶道を通じて強く感じます。
その源流を辿れば、日本のお茶文化は中国に端を発し、長い時間の中で互いに影響を与え合いながら育まれてきました。
まさに「一杯のお茶」は、国境を越えて人の心をやわらかく結ぶ“静かな橋”といえるのではないでしょうか。

煎茶道は、唐代から明代にかけての文人文化に学び、日本で独自に花開いたものです。
お茶の香りに耳を澄ませ、器の景色に季節を映し、静かに息を整えて一煎を味わう──そのひとときには、争いや利害とは無縁の心の平安が宿っています。
中国でも日本でも、そして世界のどこであっても、お茶を前にした時、人は自然と穏やかになります。
そこにこそ、“人を結ぶ茶の力”があります。

2025年11月蘇州で開かれた「第3回中国工夫茶博覧会」に参加し、多くの茶人と席を共にしました。
煎茶席には予想以上のご来席をいただき、流派や国境を超えて、茶を敬う心が静かに広がっていくのを肌で感じました。
お互いの茶の味や所作やもてなす心を尊び合いながら語り合う時間は、まさに“茶縁”そのものであり、茶がもつ不思議にして深い魅力がいかに人と人を結びつけるかを改めて実感するひとときでした。

こうした交流の場に立つたび、私は煎茶道が現代において果たすべき役割の大きさを考えます。
国際情勢が揺れる時期であっても、文化そのものは失われません。
むしろ今だからこそ、「敬い、和し、静かに寄り添う」という和敬清閑の煎茶道精神が、国を超えた理解と友好を育む礎になると感じています。
お茶を点てる所作や空間のしつらえには、相手を敬い、互いの存在を大切に思う気持ちが宿っています。
それは政治や利害とは別次元にある、人として大切な心です。
お茶に込められた心は、声高に語らずとも、人を優しく導きます。
どんな時代であっても、茶を介した対話は必ず道をひらきます。

一碗の茶が相手の心に温かな灯火をともし、その灯りがまた次のつながりを生む文化交流とは、そのような小さな“静かに灯る心の火”の積み重ねによって築かれていくものだと思います。
煎茶道は、静かで確かな“友好の架け橋”です。
すでに中国でも大勢の煎茶道愛好家たちが誠を持って学んでいます。
これからもお茶を通じて、人と人の心が穏やかにつながり、国を超えて理解し合える未来を育んでいきたいと願っています。


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